「民共共闘」とは何か-そのオルタナティブを考える

 衆議院議員である長島昭久民進党を離党したことは、ちょっとした話題になった。長島は離党の理由として、民進党と共産党選挙協力、すなわち「民共共闘」を挙げている。実際のところ離党の理由としてはいろいろな憶測があるのだが、とりあえずここでは「民共共闘」をどう評価できるか考えていきたいと思う。
 そもそも、民進党はなぜ共産党選挙協力をするのだろうか。その理由は選挙制度にある。衆議院選挙制度小選挙区制を中心としたものであるが、第三の候補者が出てきた場合、小選挙区制は票割れという深刻な問題を抱えることになる。
 例えば、下のような事例を見てみよう。この選挙区で議席を獲得できたのは政党Aである。ところが、政党Cの立場が政党Bに近いもので、政党Cの支持者が政党Aよりも政党Bを望ましいと考えていたとしたらどうだろうか? この場合、政党Cは候補者擁立を見送ることによって、政党Bを勝利させることができるのであり、また、それが民意=有権者の選好をより正確に表した選挙結果であるといえる。

  得票率
政党A 45%
政党B 40%
政党C 15%

 そもそも、小選挙区制においては政党Cのような存在を前提としていない。なぜならば、政党Cのように当選可能性が低い候補者は、合理的な選択によって立候補をしないはずであって、結果として小選挙区制は二大政党制をもたらすと考えられるからである(デュヴェルジェの法則)。
 ところが、衆議院選挙制度小選挙区比例代表並立制と呼ばれるものであり、比例代表部分に頼った小政党も存在する。このような小政党には、仮に当選可能性が低かったとしても、比例代表における票の掘り起こしや地方組織の維持・活性化を目的として、小選挙区に候補者を擁立するメリットが存在する。
 ここで、政党Aを自民党、政党Bを民進党、政党Cを共産党とすれば、「民共共闘」の構造を理解しやすい。共産党には当選可能性がなくとも候補者を擁立するメリットがあるのであり、その結果として自民党が「漁夫の利」的勝利を得ていた選挙区が一定程度あったのである。
 さらに、下の図は第47回衆議院議員総選挙における明推協の意識調査の結果だが、いわゆる「革新政党」が日本には数多く存在することがわかる。つまり民進党が二大政党の一角を担うのは極めて難しいのである。

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  このような理由から、民進党は合理的選択によって野党共闘を進めてきた。ここで大事なのは、民共共闘」には確かに「野合」的要素もあるものの、それは同時に、選挙結果にわれわれ有権者の選好を正確に反映しようとする試みでもあった、ということである。共闘はどうしても批判の対象になりやすいが、このようにポジティブな評価を加えていくことも必要である。
 しかしながら一方で、野党共闘が政党の境界を曖昧にし、また政党ラベルを傷つける可能性がある、という批判も正しい。特に最左派・共産党との協力に否定的な見解が多いのも理解できる。だがしかし、それならば、われわれの選好をより正確に反映できる別の方法を模索するべきではなかったのだろうか。
 実は、小選挙区制を維持したとして、そのような選挙結果をもたらす選挙制度を設計することは十分に可能である。この点については、坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書)に詳しい。例えば、いま話題のフランス大統領選挙で用いられている決選投票付き多数決もそのひとつの方法であろうが、坂井氏はボルダールールを有力視ししている。
 ボルダールールを説明すると、例えば候補者が三人ならば、有権者は三人に順位をつけて投票し、候補者は順位によって3点、2点、1点と点数を獲得する。そしてこの点数の合計が最も多い候補者が当選する、というものである。このルールならば小選挙区制の脆弱性である票割れを緩和できる。
 また、小選挙区制における票割れという脆弱性に苦しめられているのは、民進党だけではない。先の参院選においては、幸福実現党の候補者擁立によって自民党議席を落とした選挙区が複数あった(参照)。
 このように考えれば、小選挙区制の脆弱性を克服できるような選挙制度与野党で作成していくのは、決して不可能なことではなかったといえるだろう。長島昭久民共共闘を理由に離党してしまったが、民共共闘は合理的選択であった上に、有権者の選好をより正確に反映できるものであった。民共共闘のデメリットを問題視するならば、小選挙区制の脆弱性を克服できるような選挙制度を提案し、率先して与党を巻き込んだ議論を起こしていくべきだったのではないだろうか。

 

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

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「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

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